ベルマークのない自由帳

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有益と無益の境界例

チェスオープニング紹介:フレンチディフェンス

 

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今回は黒のカウンターが強力なオープニングとして有名な「フレンチディフェンス」を紹介していきたいと思います。
 
 

フレンチディフェンスの形

1.e4 e6 がフレンチディフェンスの基本形となります。
 

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「え、たったこれだけ?」
と思うかもしれませんが基本形はここまでで、もっともポピュラーなメインラインと呼ばれる形は2.d4 d5となります。
 

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1.e4 e6 2.d4 d5 までは自然な流れですね。
 
このメインラインの形にしたときの白と黒、両者の狙いや変化形について触れていく前に…
少しだけ、フレンチディフェンスの歴史についてお話しましょう。
 

フレンチディフェンス誕生の背景

フレンチディフェンスが誕生したのは今から180年以上前、1834年に行われたオランダとフランスの通信チェスの対局でのことです。
黒を持ったフランス側が1…e6を打って勝利を収めたことに人々は驚きました。
 
「あれ、1…e6って強いんじゃね?」
 
こうして1...e6が見直され、フランスに対する尊敬の念を込めてフレンチディフェンスと呼ばれるようになりました。
 
しかし、初代チェス世界チャンピオンのヴィルヘルム・シュタイニッツは、フレンチディフェンスについてこう言っていました。
「私はね、生涯で1度もフレンチディフェンスを打ったことがないんだ。なにせ、あらゆるオープニングの中で1番 ”のろま” だからね!」
この発言からもわかるように、当時は1…e6という手はあまり評価されていませんでした。
 
どうしてフランスが1…e6を打ったのかというと、フランス側のChamouilletという選手が他の選手を説得して1…e6を決行したからです。
多くの研究がなされた結果、非常に強力なカウンターであると評価され現代では不動の地位を獲得するに至りました。
Chamouilletには先見の明があったということですね。
 

フレンチディフェンスの狙い

メインライン(1.e4 e6 2.d4 d5)における黒と白のそれぞれの狙い(メリット/デメリット)を確認したいと思います。
 

白のメリット/デメリット

メリット
・1.e4と2.d5とすることでセンターを支配することができる
・マイナーピースの展開を準備できる

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基本的にはコマを一気に展開して、消極的な動きをする黒を一気に畳み掛ける戦略です。
 
デメリット
・d4とe4は横に並んでいるので攻撃されやすい(特にd4)
・長期戦になると弱い(特にクイーンサイド)
 

黒のメリット/デメリット

メリット

・1…e6 2…d5とすることで強力なポーンチェーンを作ることができる
・白のポーンファランクス(横に並んだ形)にカウンターを仕掛けられる

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戦略的には黒マスビショップの利きも通るため、ポーンチェーンを活かしたクイーンサイドからのカウンターが一般的です。
cポーンを使ってd5を固めたり、白のd4を攻撃する手なども考えられます。
 
デメリット
・e6とすることで白マスビショップの展開を妨げる
・ポジション的な優位を失う
 

変化形を簡単に紹介

メインライン:2.d4 d5

 

メインラインの解説はすでにしているので、変化形について簡単にご紹介します。
メインラインのあとは3.Nc3が40%以上の対局で指されています。

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このとき黒には3つの対応があり、まずはその3つの変化形から見ていきましょう。

ウィナワー・バリエーション:3…Bb4

3.Nc3にたいして3…Bb4と応じることで、ナイトをピンしてセンターへの圧力を緩和します。

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この変化の場合、白は4.e5としてナイトの役割を減らしつつBxc3に対してbxc3と応じて、ポーンチェーンを作ることが多いです。
手順としては以下の通りです。
3.Nc3 Bb4 4.e5 c5 5.a3 Bxc3+ 6.bxc3
 
特徴
  • 白はbファイルをセミオープンにできる
  • 黒はcポーンを使ってクイーンサイドから攻めることができる
クラシカル・バリエーション:3…Nf6

3…Nf6と応じることで黒はコマの展開をしながらキャスリングの準備をすることができます。
序盤の鉄則に従ったオーソドックスな1手といえます。

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白はe5を突いてナイトをいじめるために、4.Bg5と指すことでナイトをピンすることが多いです。
序盤から争点がいくつかできてコマ交換が起こりやすいため、シンプルな形になることが多いです。
 
特徴
  • コマ交換が起きてシンプルな形になりやすい
  • 白はキャスリングでキング/クイーンサイド両方の可能性がある
  • 黒は早めのキャスリングができる
ルービンシュタイン・バリエーション:3…dxe4

3…dxe4とすることで、黒はcポーンを突いてセンターの支配を取り戻そうとする狙いがあります。

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白は当然4.Nxe4と応じてきます。
そのあと黒はc5を突くために以下のような動きをすることが多いです。
4...Nd7 5.Nf3 Ngf6 6.Nxf6+ Nxf6
 
特徴
  • かなり早い段階でのカウンター
  • 黒はクイーンサイドからポーンを崩しにかかる
  • やや白が優位と考えられている

 

ここまでが3.Nc3の変化です。

次は3.Nc3以外の変化について見ていきたいと思います。

 

タラッシュ・バリエーション:3.Nd3
3.Nd2とすることで白はカウンターに備えて、守りを固める狙いがあります。

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3.Nc3と同じくe5のポーンを守っていますが、cポーンの進行を妨げるかどうか、という違いがあります。
この形ではc3にポーンを進めることでd4を固めて、クイーンサイドからの攻撃に備える狙いです。
黒は3…Nf6でe4を攻撃するか、3…c5として守られる前に攻撃するかといった手が考えられます。
 
特徴
  • 好戦的な展開が多い
  • 白はcポーンを突いてセンターの圧力を維持できる
  • 白の黒マスビショップの利きが塞がってしまう
アドバンス・バリエーション:3.e5
4.e5とポーンを進めることでセンターへのプレッシャーを強める狙いがあります。

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白はポジションの優位を築くことができますが、守りが薄くやや心もとない形です。
そこで黒は3…c5と突くことで白の攻めを崩しにかかり、d5を巡る攻防が繰り広げられます。
展開としては 3.d5 c5 4. c3 Nc6 5. Nf3が一般的です。

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特徴
  • 戦略的な局面
  • 勝敗がつきやすい(勝率はほぼ拮抗)
エクスチェンジ・バリエーション:3.exd5 exd5
3.exd5としてコマの交換をして単純な形にしてしまう展開です。

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こうすることで白はカウンターの心配がなくなりますが、引き分けになりやすい形になります。
(Chess.comのデータではこの形だと51%の対局で引き分け)
 
特徴
  • シンメトリーな形であること
  • eファイルがオープンであること
  • 白は先手なので動きを作りやすい
  • 黒は白の動きを見て対応しやすい