ベルマークのない自由帳

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有益と無益の境界例

「良い印象」を与えたいなら避けるべき4つのこと

執筆者:Vinita Mehta Ph.D., Ed.M.
 
いい印象を与える最低限の条件は…タブーを避けることですね。
この記事で避けるべきだとされていることは以下の4つです。
 
  1. 傲慢さ
  2. 謙虚に見せかけた自慢
  3. 偽善
  4. 嫌味な褒め言葉
 
当然に思える4つですが、具体的にどういった振る舞いを指すのでしょうか。

   

目次

印象操作と自己提示

他人にいい印象を与えることは私達の社会生活で欠かすことができません。
就職面接やデートの場面を想像してください。
相手に評価されるためには人としての温かさ、信頼性、有能さを伝えなくてはいけません。
印象操作(impression management)についての研究は古くから行われており、誰でも自分自身をポジティブに見せるスキルに長けていることがわかっています。
そうしなければ社会的なリソースが枯渇してしまうからです。
(正確には、社会的場面をうまくやる精神的エネルギーがなくなる)
 
自己提示には2つのステップがあります。
1つ目、相手に伝えたい「もっとも重要なイメージ(自己像)」を選ばなくてはいけません。
2つ目、そのイメージを戦略的に提示しなければなりません。
研究者たちは2つ目のステップこそ難しいのだといいます。
いい印象を与えるためには「自己制御(self-regulation)」と「自制心(self-control)」(※1)を身につける努力が必要です。
たとえば、認知的に過負荷(自分の手に負えない状態)になったり混乱したりすると、鼻にかけるような自画自賛をはじめます。
そうなってしまうと、他人とうまくやっていくことが難しくなります。
 

印象操作が下手な人の特徴

精神的能力(mental resource)にかかわらず、いい印象を与えることが下手な人もいるのでしょうか?
 
印象操作に関する伝統的な考えは、ユトレヒト大学の心理学者ヤニーナ・シュタイニッツ(Janina Steinmetz)によって築かれました。
彼女と共同研究者たちは下手な自己提示をしてしまう人たちは精神的能力が乏しいのではなく、2つの大きな要因があるのだといいます。
1つ目の要因は、相手の立場(perspective)で物事を考えることができていないことです。
相手の立場で考えることは「他人の考えを想像する能力」を意味しており、これは簡単なことではありません。
これがうまくいかない時は、相手がどう受けとめ、感じるのかを「予測ミス(mispredicting)」しています。
2つ目の要因は、ナルシシズムです。
はじめはナルシシストのエネルギッシュで、面白く、楽しませるような振る舞いが魅力的に感じます。
しかし時間が経つにつれ、彼らの傲慢さや対抗心が露わになり、人を寄せ付けなくなっていきます。
ナルシシストは、自分が優れていると信じており、下方比較(※2)や他人を見下す態度をとり、親密な関係にも影響します。
また、彼らは共感能力や相手の立場で考える能力がほとんどありません。
相手の立場を捉え損ねることやナルシシストの失敗から、著者たちは印象操作で「逆効果の4つのこと」を唱えました。
 

避けるべき4つのこと

 

傲慢さ(hurbis)

自尊心の尊大な様(self-aggrandizing)を露わにすると、他人にとっては受け入れがたくネガティブな印象を残す傾向があります。
研究による裏付けもあります。
ある研究で、「主人公」が学力や交友関係の面で「他人より優れているようにみせかける」か「ありのまま(non self-enchacing)」の内容の小話を用意して、被験者にどちらか一方を読んでもらいました。
「優れているように見せかける」条件では「私は他の人よりも友人になるには良い人物ですよ」という下方比較を主人公が行いました。
「とくに何もしない」条件では「私は友人になるには良い人物です」というように、比較をせずに同じ内容の主張を行いました。
これらの条件において被験者たちの印象に違いがあるのか、調べてみました。
被験者たちは交友関係と学力とに関係なく、下方比較を行う主人公にもっとも嫌悪感をいだきました。
被験者は、主人公が他人だけでなく被験者も見下しているように受け取りました。
その結果、被験者は自己防衛をしようと主人公に対して敵意や反抗心を抱きました。
 

謙虚に見せかけた自慢(humblebragging)

謙虚に見せかけた自慢とは、不平不満や謙遜を装って自慢をすることです。
たとえば、SNSユーザの「お昼寝から目を覚ましたばかりで髪もセットしてないのに、また言い寄られちゃった!もう混乱しちゃう!」というような発言です。
謙虚に見せることによって、表面上は不快な態度をあらわにしながら、いいことへと注意をひくことができます。
ただ、謙虚に見せかけた自慢屋は誠実さ(sincerity)が疑問視されて、結局はネガティブな印象に至ります。
彼らは「偽りのない真実」というものがどれほど重要なのか、見誤っています。
謙虚に見せかけた自慢よりも単に不満や自慢を口にする方がはるかにマシです。
ただの不平屋や自慢屋は、謙虚に見せかけた自慢屋よりも誠実で好ましいと捉えられています。
謙虚に見せかけた自慢屋は本音を隠せると信じていますが、現実は異なります。
 

偽善(hypocrisy)

偽善者(hypocrites)は自分自身に特定のイメージをもたせようとするものの、そのイメージの基準に適合しない人たちです。
わかりやすく言うと、偽善者とは特に道徳的な問題について「言うことは言うけど、やることはやらない」類の人間です。
(実行しているのなら偽善者には含まれません)
そうした偽善的な発散行動(※3)を抑えることができれば、実際に行動に移せるようになります。
しかし、好ましいイメージの基準に自分が合致しないと気づいたとき、嫌になって投げ出すことが多いです。
 

嫌味な褒め言葉(backhanded compliments)

嫌味な褒め言葉とは、褒め言葉のうちに侮辱の意をこめて、意図的に恩着せがましいもの言いをするものです。
たとえば、「きみが今回の試験でうまくいくなんて予想できなかった。素晴らしいよ。」というような発言です。
彼らの発言の意図は、「好かれたい」という願望と「優位な立場を築きたい」という願望をいっぺんに叶えたいのです。
誰しも褒めることが好きで、褒められると好意的に受け取ります。
しかし、皮肉めいた褒め言葉を言われると反発します。
このような発言で優位性を築くことはできません。
 
補足
※1.「自己制御(self-regulation)」と「自制心(self-control)」の違い
自己制御(self-regulation) = 表情や仕草、目線などを意識的に制御する外的な操作
自制心(self-control) = 感情や欲求を意識的に抑える内的な操作、メンタルのタフネス
(厳密なタームとしての定義ではありません)
 
※2.下方比較(downward comparson)
社会的比較理論における「自分を守るために、より悪いと思われる対象と行う比較」
傲慢さにある下方比較によるアピールは、言外のうちに「話し相手」もその比較対象に含まれていると考えられる
 
※3.発散行動(divergent behavior)
ここでの意味合いは、主に道徳的とされる事柄について、その必要性や尊さを口にするだけで理想とするイメージに近づいたと勘違いすること。
「自分はこういったことも考えている」と主張することで満足してしまうこと。
 

個人的な感想

「あー、いるいるこういう人」と思いながらも、自分が後ろ指をさされていないか少し心配になりました。
自分のことを棚に上げる人ほど不快感を撒き散らす存在はありませんからね。
日頃から自分の振る舞いに自覚的でありたいものです。
 
しかしhumblebraggingは訳しづらかった…。